’13
Jul
9
上海スパイシーアドベンチャー
万博の前年、打ち合わせを兼ねてS氏と上海へ渡った。
日本への土産は『胡椒』が喜ばれるというアドバイスをいただいた。日本では売っていない珍しい香辛料がいくつもある上サイズは小ぶり重さも軽量、液体ではないからお咎めもないという情報によしそれだ!と決意し帰りの空港に向かう途中、大型スーパーに立ち寄った。
出発まで時間がないのにどこを探しても調味料売り場が見つからない!
仕方なしに店員を呼び止め『Pepper?』とゼスチャーを加え尋ねてみた。
英語は通じないと聞いてはいたが案の定。試練その1が立ちはだかった。
『Spice?』も同様やはり全く通じず、あちらが困った顔で
『もう堪忍しておくれやすー』と計3人もの店員に逃げられた。
落語のうどんをすする仕草には自信があったのに、
扇子よりボールペンの方が箸に近いのに、エアー丼は見えなかった様だ。
去り際に『変なやつ来たゎ。』と話してる風にも見えた。
いよいよ店員は皆 目を合わせてくれない。
迫り来る飛行機の出発時間。外で待ってもらっているS氏にも申し訳ない。
諦めかけた瞬間、先ほど箸代わりに使ったボールペンとリングノートが直結しノートにラーメンと胡椒の絵を描いて、逃げられた店員を再度呼び止めそれを見せた。
打って変わって…とはこのことであった。
困惑と災難が入り混じった顔でノートを覗きこんだ店員が『 %&”#&’~!!!』と大きな声で叫ぶやいなや、わらわらと7~8人の老若男女の店員が集まり、ノートを次々に手渡しながら何やら盛り上がり、みんなどけどけ~~~い!だんじりが通るんじゃー!みたいな人数に囲まれながら(地下にあった!)調味料売り場に案内され、口々に『&(‘&”# !!(多分ココ!ココ!)』と大きな声と大変な笑顔で売り場を紹介された。京劇の決めポーズみたいな人も居た。
こちらも負けずに大きな声と笑顔で『谢谢!谢谢!(谢谢の発音は現地の人からめっちゃ上手いと褒められてたので自信があった)』と対応した。
がしかし、売り場が見つかった頃には更に時間が差し迫っていたのでボヤボヤしている暇はない。と意気込んだ自分に試練その2がほくそ笑んだ。目前にずらりと並ぶ調味料のオンパレード。胡椒(っぽいのも含む)だけでも幅2~3メートルに渡り棚にぎっしり詰まって並んでいるのだ。しかもだ!当たり前ではあるけれど全部 中国語なのだ!用途も何もわからず適当に、かなりの量をスーパーのカゴにざくざくと放り込みレジに向かった。
あとは精算を済ませるだけだ!と安心しかけているところへ最後の試練その3が始まった。レジ台にそのカゴを乗せた途端、レジ係の若い女性の表情が凍てついた。カゴいっぱいにありとあらゆる種類の胡椒…。こいつは何が目的なのだ!?!? 頭がおかしいのか!?!?!? コロンブスの生まれ変わりか!?!?!?!? と思われてても仕方のないほどの量だったので彼女に全く罪はない。しかもそれを全てレジに通さなければならない苦労をこちらは完全に忘れていた。幸い穏やかなタイプの女子だったので苦笑いで一つづつを丁寧に処理してくれている… でも!時間がない!!!急げ!とは口が裂けても言えない。急いでほしいという中国語を知らないからだ。時計を何度も見ながらそわそわしている自分の後ろに並んだ人が、あ…ここハズレ…という表情をしてるに違いないと想像し背中で勝手にそれを感じていた。
精算を済ませめちゃめちゃ焦りながら大量の胡椒を袋詰しているアロハシャツにひげ(中国には絶対存在しない格好)の変なおっさんを現地の人はどう観ていたのだろう。麻薬の運び人にしてはショボイし、日本人にしてはインドネシアすぎる顔立ちにさぞ戸惑ったであろう。
土産を持ち帰った日本でその袋から『マコーミック』の胡椒がいくつも出てきたのが懐かしい。